名古屋港水族館太郎、略してポータンによる、ネタの世界です。
ちいさな物語④
 『メロディーフラッグ』
「ボクにとって、唄う事は生きる事。
歌を忘れてしまったら、唄うことを止めてしまったら、ボクは死んだも同然なんだ」

『私は歌が好きで、唄うことが幸せ。
歌を奪われてしまったら、唄う事を止められてしまったら、もう生きてはいけない』

「……そうだ。
ふたりで歌を唄う、唄う為だけの国を築こう……!」

『唄う為だけの……、国……?』

「歌を愛し、唄う事を愛する人だけの国だよ。
そこではお金も仕事も関係ない、ただ唄う事が活きる資格なんだ」

『……素敵。
夢のようね……、そんな国があったら……』

「つくるんだ!
キミとボクとで、歌の王国をつくろう!」

『……本気?』

「ボクはいつだって、本気だよ!
ボクもキミも、国中の誰もが唄う事を愛する国を!
ふたりで築き上げていこうよ!」

『……資金は?』

「え?」

『建国資金と、国民の人数の予定は?
国を作るにはまず、国民と国の指針、あと建国資金が要るでしょう?』

「唄う為だけの国だから、そんなの要らないよ」

『要るわよ。
まずは土地の確保もしないといけないし、
国家として、諸外国と交流を結んだり、交易を広げる必要もあるわね』

「それなら、ボクらは歌を交易に使おうよ!」

『小学生か。
日本に宝塚歌劇団があるように、
世界にもオペラやミュージカルなんかの、高いクオリティの方々がいるのよ?
私とキミの歌なんか、相手にされないわよ』

「相手にされないかどうかは、やってみなとわからないよ!」

『わかるわよ。まずどこかの劇団にでも所属しないと、公演も出来ないでしょ』

「公園なら、ウチの近所にもあるよ?」

『そっちじゃあないわよ。程度の低いボケは、やめてくれる?』

「……なんてことだ。ただ唄いたいだけなのに、それすら許されないのか……!」

『カラオケにでも行けばいいじゃない』

「カラオケは高いんだよ!そんな毎日、行ってられないよ!」

『毎日行かなくても、じゃあ家で唄ってればいいんじゃない?』

「家で唄うと、隣の人に聞かれるから恥ずかしいよ」

『国をつくろうとか、よく言えたわね。それで』

「言うは易し、唄うは恥ずかしい」

『恥じるくらいなら、唄うの止めなさいよ』

「……唄う事を止めるくらいなら、ボクは死を選ぶ!」

『本当に?じゃあ、そんな覚悟嗚呼るのなら、私がここで殺してしまっても構わないわね?』

「ああ、好きにするがいい。私は取り返しのつかない…違う、殺さないでよ!」

『なんでよ。唄えなくなったら、死ぬんでしょ?』

「なんか違う、それ!ていうか、まだ唄えるから!」

『じゃあ、証拠を見せてよ。
いま、ここで、思いっ切り何か唄ってごらんなさいよ』

「いま?な、なう?」

『なう。唄え、なう』

「命令形になった……。
キミ、そんなキャラだったっけ……?」

『女の顔は一つではないのよ。
ボウヤ、覚えておきなさい』

「あれ?同い年じゃあなかったっけ?」

『とりあえず、ちゃんと唄える覚悟が出来るように、
いまから駅前に行って唄う特訓を開始します』

「スパルタ教育!
駅前とか、マジで言ってるの!?」

『マジよ。
唄えるようになるまで、夕飯は抜きです』

「……夕飯だけなんだ」




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【2017/05/13 05:08】 | ちいさな物語
|
ちいさな物語③
 『青空ファイターズ』

「俺は今・・・、マウンドに立っている。
憧れ続けた、球児たちの聖地に、ついにこの脚を降ろしている・・・。
ここまで、本当に長い道程だった・・・。
あれは、俺たちがまだ野球のルールすら知らなかった、夏の暑い日・・・。
1人の男に声を掛けられたことが、今思えば、すべての始まりだった。
・・・あの日、キャッチボールもできなかった柳原・・・。
帰りにラーメン屋に寄るのが大好きで、俺もいっしょに食いに行った。
下澤と、梶田、渡辺たちがラーメンを頼む中、アイツだけがチャーハンを頼んでいた・・・。
俺はその時、キャッチャーはコイツしかいないと確信したんだ・・・!
その後、2回目の春が来て、アイツが恋をした・・・。
俺たちはその恋を応援してやろうと、何度もアイツをあの子に会わせようとした。
・・・え?柳原?違うよ、市村の話だよ・・・。
下澤と、梶田、渡辺があの子の名前や学校を調べている間、アイツだけが駄菓子を食べていた・・・。
俺はその時、4番バッターはコイツだと確信したんだ・・・!
それから月日の流れるのは早いもので、気が付くと俺たちは3年生になっていた。
就職や進学といった、新しい敵が現れた。
今までは恋愛やバカ話で終わっていた一日が、ストレスでいっぱいになった・・・。
そんな時、アイツが俺達を導いてくれたんだ・・・。
アイツは俺たちに、寝る間を惜しまずに野球の練習をしていれば、甲子園に行けるぞ、と。
受験も就職も、後回しにして誤魔化せるぞと教えてくれたんだ・・・!
・・・え?市村?違う違う、アイツってのは今藤のコトだよ。
下澤、梶田、渡辺は誘いを断って塾に行き、良い大学へ進学した。
そんな中、アイツだけが野球を続けているフリをして、現実から逃げ続けた・・・!
その現実逃避能力の高さを見て、監督はコイツでいいや・・・。そう思ったんだ・・・!
懐かしいなあ・・・。
そんな長かった高校生活が、ここではまるで昨日のことのようだ。
月日は百代の過客にして、盛者必衰のなんとやら・・・。
・・・まあ、要するにペラッペラの3年間だったなあ、というコトだ・・・。
それでも、こうして甲子園の土を踏めたことは、俺の・・・いや、俺たちの栄光の証だ!
今のこの胸の高鳴りを忘れずに、明日に向かって、どこまでも走り続けてやるぜ!」

『コラー!そこのキミ、マウンド内に勝手に入るんじゃあない!!』

「ここから始まる、俺たちの戦いの・・・」

『甲子園試合は昨日終わったんだっつーの!
勝手に出入りしちゃいけないんだよ、ここは!!』

「甲子園は終わっても、俺たちの人生はまだまだこれからなんだ・・・!」

『不法侵入で早速人生終わりそうだけど、いいかい?』

「・・・すいませんでした」







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【2017/01/07 04:07】 | ちいさな物語
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ちいさな物語②
 『叶わぬ恋に嘆く声』
「先輩!お願いします、ボクと付き合ってください!」

『付き合うって・・・。
気持ちは嬉しいけど、あなたと私では無理な話じゃない?』

「・・・!!
それはボクが、ボクでは先輩とは釣り合わないということですか・・・?」

『釣り合わないというか、そういうことではなくて・・・』

「ハッキリ言ってください・・・!
無理なら、迷惑なら!きっぱりと諦めますから・・・!!」

『いや、だって、貴女は・・・』

自分の心が、美しい女性に惹かれるようになって、随分経った。

今でも擦れ違う女性に振り向くし、綺麗な女性の前で足を止めることもある。
抗えぬ衝動、とでも言うのだろうか。
ボクが否定しようとしても、消し去ろうと努めても、どうにもならない。

そう、問題はたった一つだけだった。

『貴女は・・・女の子でしょう?』

そうなんだ。
ボクは、女性が大好きなんだけれど、身体はボクも女性で。

けれど諦められないし、男性に対しては1mmの興味も沸かない。
色々と心無い言葉も言われ続けてきたし、時には面と向かって気持ち悪いとも言われたこともあった。

だけど自分の心は、本当の声は止められない。

「だけど、だけど・・・ダメなのかなあ、やっぱり・・・」

先輩が立ち去った後も、ボクはその場から動けなかった。

クリスマスを前に冷たさを増した風が、ボクの全身を刺す。
身体の冷たさよりも、今は心に誰かのぬくもりが欲しかった。

けれど、そんな風に孤独を噛み締めていても、誰も手を取ってはくれない。
理解はしているけれど、それでも肯定したくない。

真っ白な雲で覆い尽くされた冬の空を見上げて、ボクは静かに泣いた。

「う・・・うわあああああああああ!!
男なんか嫌だよおおおおおおおおおおおお!!
女の子と!女性と!イチャイチャしたいよおおおおおおおおお!!
可愛い女の子と手を繋いで、公園を散歩してみたいよおおおおおおおおおお!!
綺麗なお姉さんに甘えたいよおおおおおおおおおおおお!!
頭をポンポン撫でれながら、『大丈夫だよ』って抱き締められたいよおおおお!!
てゆうか膝枕で寝かしつけて欲しいよおおおおお!!
なんなら3つくらい年下の女の子から、ぎゅってされたいよおおおお!!
ひとつのグラスにお互いのストローを差して、ジュースが飲みたいよおおお!!
なんなら口移しで、チェリーを食べさせて欲しいよおおおおお!!
もういっそ人妻でもいいから、後ろからハグして欲しいよおおお!!
いっしょにお風呂とか入って、流しっことかしてみたいよおおおおおおお!!
現実にはいないけど、隣の家に住んでる同級生とか欲しいよおおお!!
小さい頃からいっしょに育って、趣味も好みもおんなじで、ある日突然告白されたいよおお!!
幼馴染が無理なら、もう通学路で見かける女子高生でもいいよおおおお!!
『実は、毎朝見かける度に、ずっと・・・気になってて・・・』とか言われたいよおおおお!!
大好きなミュージシャンから、突然ラブメールとかが送られてきて、
『ファンクラブの中から、キミの写真を見てずっと会いたいと考えていました。
ライブに来てくれない日は、寂しくて私の歌もちゃんとフルパワーで唄えないから・・・。
だから・・・、だから貴女には今日から私といっしょに暮らして欲しいの!
もちろん時期が来たら婚約発表もするわ!一緒に来て!お願いよ、マイハニー♪』って、
私に対する愛に溢れた言葉が欲しいよおおおおおおおおおおお!!
途中からメールというよりは、直接の言葉になってたけど、それも欲しいよおおおお!!
男なんか嫌だああアアアアアアアアアア!!!!」

『・・・全然、静かに泣いてないじゃない』

次にボクが目を覚ましたのは、警察署だった。

生まれてきて、ごめんなさい。
ていうか、外で唐突に自分の欲望をブチ撒けて申し訳ありません。

はい、もう少し周囲の迷惑を考えて行動・発言致します。

家族にも、とても心配掛けたなと反省しております。

女です、はい。
適当な男と結婚するか、引き籠ってネットでもしてます。

はい。




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【2016/12/19 23:48】 | ちいさな物語
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ちいさな物語①
 『大草原の地平線の果てにポツンと見えるくらいの小さな家でのあれこれ』

遥かに見える大草原の果て、地平線が一本、青空を割いて浮かんでいる。
見渡す限り草と平原しか見えない、そこは大きく果てしない大地。
小鳥が水たまりの周りで唄い、楽しそうに触れ合い。
草食動物たちは群れを成し、穏やかに砂の上を歩いていく。
その群れの後ろから、肉食動物たちがゆっくりと獲物を狙う眼差しで追い掛けていく。

そんな平和な大草原の、地平線の彼方。
ちいさな家が、ポツンとひとつだけ見える。
昔ながらの煉瓦造りのその家には、楽しい一家が住んでいた。

父親は木こり。
どんな大木でも、彼の手に掛かれば簡単に材木に変わってしまう。
村では評判の力自慢で、彼の手に掛かればどんな木も切り倒されてしまう。

しかし、ここは大草原。
草はあれど、木は一本たりとも生えてはいない。
彼がそのことに気が付いたのは、大草原で暮らし始めて1年が経った頃だった。

母親はジャム作りの名人。
どんな木の実でも、果物でも、すべて絶品のジャムにしてくれる。
彼女のジャムを求めて、村には大勢の人々が訪れた。

しかし、ここは大草原。
彼女がジャムを作ろうにも、ここには果物も、木の実すら無い。
仮にちいさな木の実が採れたとしても、ここには砂糖が無い。
彼女がジャムが作れないことに気が付いたのは、大草原での2年目の春だった。

娘ふたりはダンスと歌の名人。
妹が唄い、姉がその歌と共に踊りを披露する。
大人顔負けのふたりの演技は、大勢の人たちを惹き付けた。

しかし、ここは大草原。
歌もダンスも披露すれど、大草原には動物しかいない。
小鳥も、ライオンも、いまそのライオンに食べられているシマウマも。
ふたりの歌と踊りを見ることは愚か、理解する脳も持ってはいない。
そのことをふたりが悟ったのは、新生活から3年が過ぎた秋だった。

大草原の地平線の果てにポツンと見えるくらいの小さな家での、平和な物語。

穏やかな大草原の中に、今日も平和な時間が流れる。
死んでいくシマウマの目にさえ、大草原の地平線は穏やかに映る。

明日は、どんな一日になるのかなあ。。。





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【2016/12/15 02:10】 | ちいさな物語
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